Voyage MPD という Linux のディストリがあります。このディストリは MPD (Music Player Daemon) を標準装備し、PC オーディオで高音質を得るためのチューニングが施された音楽再生に特化したエディションです。オーディオマニアの方々の間でも定評を得て、徐々に一般にも浸透してきているようです。
私自身はそれほど熱心なオーディオファンではないのですが、Voyage MPD は興味本位で試してみたいと感じていました。ちょうど、最近ほとんど使わなくなったノートPC (ASUS UL20A, Intel Celeron SU2300, 4GB RAM) を持て余していましたので、このPCに Voyage MPD を導入して、その音質を体験してみたいと思います。
Voyage MPD のインストールは内蔵の HDD に行うことにします。本当は SSD の方が静音性が高いでしょうが、残念ながら手元に余ったものはありません。さらに言えば SD カードなどに入れた方が良いのでしょうが、UL20A は SD カードからブートできないようです。理想を言えば、ALIX のような低電力でファンレスのマシンに導入するのがより効果的でしょう。
今回は妥協だらけですが、あくまでも入り口を少しだけ体験したい、ということで。以下に導入した手順を備忘録として残します。
インストール
ここ から Voyage MPD の Live CD を入手します (voyage-mpd-0.9-rc2.tar.bz2, 2013-01-03)。CD で起動して、以下のインストールの手順に従います。
ここにも簡単にメモしておきます。
- ディストリのディレクトリを作成
# mkdir /tmp/root # mount -o loop /live/image/live/filesystem.squashfs /tmp/root # cd /tmp/root
- マウントポイントの作成
# mkdir /tmp/cf
- ターゲットのディスクをフォーマット
# /usr/local/sbin/format-cf.sh /dev/sda
これは /dev/sda
に ex2 でパーティション /dev/sda1
を作成します。この過程は予期せず既存のデータを消去する可能性がありますので、くれぐれも慎重に行なって下さい。
- インストールスタート
# /usr/local/sbin/voyage.update
質問に順次、適切に答えます。
すべて終了すると再起動させ、CDを取り出しておきます。
# reboot
初期設定
root で初期パスワード “voyage” でログインします。
voyage login:root Password:voyage
Voyage Linux では起動後以下を実行して書き込みができるようにする必要があるようです (再起動後も書き込みが必要な場合は毎回必要)。
# remountrw
アップデートを行なっておきます。
# apt-get update # apt-get upgrade
そのままでは日本語のフォルダなどが文字化けしますので、まずはロケールを日本語 (ja_JP.UTF-8
) に変えておきます。
# dpkg-reconfigure locales ja_JP.UTF-8
タイムゾーンも変更しておきます (「アジア」「東京」)。
# dpkg-reconfigure tzdata Current default time zone: 'Asia/Tokyo'
ルートのパスワードを変更しておきました。
# passwd passwd: password updated successfully
ユーザー (ここでは hoge) を追加しました。
# adduser hoge
追加したユーザー hoge に管理権限を与えておきます。
# visudo hoge ALL=(ALL) ALL
サウンドデバイスの操作が行えるように、このユーザーを audio グループに加えておきました。
# usermod -G audio hoge
IP アドレス (ここでは 191.168.0.100) を固定しておきます。
# cp /etc/network/interfaces /etc/network/interfaces.bak # vi /etc/network/interfaces auto eth0 iface eth0 inet static address 192.168.0.100 network 192.168.0.0 netmask 255.255.255.0 broadcast 192.168.0.255 gateway 192.168.0.1 dns-nameservers 192.168.0.1
Voyage MPD では初回起動時に ssh はスタートしているようです。すでにルート権限のあるユーザーを追加しましたので、念のためルートでのログインは禁止しておきます。
# vi /etc/ssh/sshd_config PermitRootLogin no # /etc/init.d/ssh restart
さて、最後に USB-DAC をデフォルトのサウンドデバイスにするために alsa-base.conf
の以下の箇所を編集しておきます (index=0)。
# vi /etc/modprobe.d/alsa-base.conf options snd-usb-audio index=0
USB-DAC を接続しておきます。私は手持ちの Audinst HUD-mx1 をつなげました。
ここで再起動を行いました。
# reboot
Voyage MPD は WebGUI (Meshlium Manager System) も利用できるようですが、今回はこれを使用しませんでした。上で設定した項目は概ね WebGUI からも設定できるようです。WebGUI も初期パスワードは “voyage” です。
MPD
いよいよ MPD (Music Player Daemon) の設定ですが、Voyage MPD はその名の通り MPD 用にチューニングが施されたディストリですので、殆ど何も設定しなくてもいいようです。
ここからはノートPC (ASUS UL20A) は折りたたんで、別のマシンから ssh で接続して設定を行いました。
$ ssh hoge@192.168.0.100 hoge@192.168.0.100's password: Linux voyage 3.6.9-voyage #1 SMP Tue Dec 11 09:53:27 HKT 2012 i686 The programs included with the Debian GNU/Linux system are free software; the exact distribution terms for each program are described in the individual files in /usr/share/doc/*/copyright. Debian GNU/Linux comes with ABSOLUTELY NO WARRANTY, to the extent permitted by applicable law. __ __ \ \/ /___ __ __ ___ ___ ___ Useful Commands: \ // _ \\ \/ /,-_ |/ _ |/ -_) remountrw - mount disk as read-write \/ \___/ \ / \___,\_ |\___| remountro - mount disk as read-only _/_/ _'_| remove.docs - remove all docs and manpages { V o y a g e } - L i n u x < http://linux.voyage.hk > Version: 0.9 (Build Date 20130103) Last login: Sun Mar 3 22:44:58 2013 from 192.168.0.2
ログイン後は例によって書き込みを行えるように remountrw
を実行しておきます。
$ sudo remountrw
さて、接続しておいた USB-DAC (snd_usb_audio) が最上位 (“0”) に来ているか確認しておきます。
$ cat /proc/asound/modules 0 snd_usb_audio 1 snd_hda_intel
USB-DAC を通して、スピーカーやヘッドフォンから音が出るかテストしてみます。
$ aplay /usr/share/sounds/alsa/Front_Center.wav
MPD の設定ファイル /etc/mpd.conf
は予め適切に設定されていますので、特に編集する必要がありませんでした。デフォルトの音楽ライブラリのフォルダは /var/lib/mpd/music
ですので、ここにデータを追加します。
私は 自作した NAS に音楽データを置いていますので、これを cifs で Voyage MPD の適当な場所にマウントしました。ここでは /mnt/storage
にマウントすることにします (NAS のアドレスは 192.168.0.200)。
$ mkdir -p /mnt/storage $ sudo mount -t cifs -o rw,guest,noperm //192.168.0.200/storage /mnt/storage
テストとして、NAS の音楽データから、まずはいくつかのアルバムへのシンボリックリンクを /var/lib/mpd/music
に作成しておきます。
$ sudo ln -s /mnt/storage/Music/path/to/albums /var/lib/mpd/music/
コマンドラインのクライアント mpc で操作してみます。まずはデータベースのアップデートを行います。
$ mpc update
先ほどシンボリックリンクを貼ったすべてのアルバムをプレイリストに追加するには、以下のように実行します。
$ mpc ls | mpc add
再生してみます。
$ mpc play
無事音楽が再生されました。良い音です!
今度は MPD のクライアントソフト (cf. Clients) から操作してみます。テストとして gmpc (Gnome Music Player Client) を使用してみます。
gmpc の「設定」を開くと、”Connection” の “Profile” にすでに先ほど導入した Voyage Music Player が見えますので、選択するだけで使用開始できるようです。
ハイレゾ音源 (24bit/96kHz) の再生も問題なくできます。
$ cat /proc/asound/card0/pcm0p/sub0/hw_params access: RW_INTERLEAVED format: S24_3LE subformat: STD channels: 2 rate: 96000 (96000/1) period_size: 12000 buffer_size: 48000
ALAC 24/96 を再生中。
私はそれほど高価なオーディオ機器は持っていませんが、それでも随分音が良いです。今回はノートPCのHDDにインストールしましたが、mpd 自体はとても負荷の少ない作業のようで、CPU も HDD も概ね静かに動作しており、良質の音を保持できているようです。しかし、理想的には ALIX のようなボードでファンレスのPCを組むとさらに音質は向上するのでしょう。さて、ALIX はそれほど高いものでもないし、どうしましょうか…
“余ったノート PC に Voyage MPD を入れてみる” への1件の返信