私は昔に一度、アフリカで皆既日食を見たことがあります。ザンビアの首都ルサカ郊外で、2001年の6月、21世紀最初の皆既日食でした。もう随分前になりますが、現場の雰囲気やその時の感情は今でも記憶に新しく、特に太陽が完全に隠れてしまった直後、太陽の光が一箇所だけ漏れ出る瞬間のダイヤモンドリングの光景は、強烈なインパクトがありました。そこからさらに、太陽が復活してくるにつれ、徐々に言い得ない活力が身体の奧から沸き上がってきました。現地のアフリカの女性たちが手を組んで円になって回りながらザンビア国歌 Nkosi Sikelel’ iAfrika を合唱しはじめました。「コシシケレリアフリカ」。復活した太陽の光が、彼女たちのリズミカルに動く影を、アフリカの大地に映しだしました。彼女たちは「ハレルヤ、ハレルヤ」と歌い続けました。金色の大きなキャンバスに、黒い影が楕円を描き、踊っていました。
さて、時を経て、今朝、日本で金環日食が観測されました。私は自坊の本堂で家族とともに観測しました。危ぶまれていた天気も、その瞬間には十分に観測できるほど回復していました。徐々に気温が低下し、光が弱まり、風が出てきました。鳥が敏感にその変化に気づいて、バタバタと羽音を響かせながら、大きな鳴き声をあげていたのが印象的でした。
片手に太陽グラス、片手にカメラを抱え観測していましたが、後から動画を確認すると、目の前の木の間から光が漏れ、ほんのり小さく金の輪が出来ていました。